2008年8月5日火曜日

ロボットプロレス in かわさき 興奮の決戦3番勝負実況中継

 15年ほど前に「number」誌の末尾の小さなスポーツニュースを伝えるコーナーに掲載された。出来事をvividにリポートするのが報道記事なら、こういう手法もありだ。ゲームに合わせた軽快でテンポよい文には、オチまで用意されている。

 オレは興奮していた。最近見たプロレスよりも興奮していた。8月27日、川崎産業振興会館の昼。第1回かわさきロボット競技大会。
 いま、記念すべき決勝戦が始まろうとしているのだ。約300人の満員の館内は静まり返っている。
 この日すばらしい試合の連続だった。ベンダー対ハンセンのような、猪木対アンドレみたいのもあった。試合に負けボーゼンとし、涙をこらえる奴までいたんだから。
 ルールは簡単。3分1本勝負。相手をひっくり返すか、ロープに3秒押し込めば勝ち。決勝は3本勝負。「鮫洲のカメ虫」(都立工業高専)対「カトレア」(東京エレクトロニックシステムズ)が決勝のカード。カメ虫は学生らしく製作費は2000円(参加費は除く)。「アルミは学校で拾ったもの、それに電池代くらいですから」。
 カトレアは―—。
 「ウーン。20万円くらいかな」。
 ゴングが鳴った。館内は一気にヒートアップ。「おせおせカメ虫。いけいけカメ虫」とコールも起こる。
 「ウィーィン、ギシギシシィー」
 「ゴケゲゲン、キキキィィィ」
 カメ虫とカトレアが激しくぶつかり合う。骨がきしむような戦いをしている。ロープ際に押し込み、盛り返しの白熱の攻防だ。1本目はなんと2000円のカメ虫が先取。2本目に入ってもカメ虫の勢いは衰えない。カトレアはリフトアップするという離れ業も。しかし時間切れ。判定は引き分け。ここでカメ虫は力尽きた。延長の末、敗北。胸が詰まった。だが、敗者はさわやかだった。
 「向こうは製作費20万円ですか。で、賞金は30万円。こっちは2000円で20万円ですからね」

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