2008年8月27日水曜日

トップクオークを確認

 1面トップになる記事のリード部分には、ふさわしい格調が求められる。一度、声に出して読んでみてほしい。高らかに打ち上げた文章には、ただうなるほかない。

 万物を形づくる基本粒子のうち、ただ一つ観測の網にかからなかった「トップクオーク」の存在を、米国、日本、イタリアを中心とする研究グループが、米イリノイ州のフェルミ国立加速器研究所の粒子加速器で確認した。来週にも公式に発表する模様だ。この報告で、物質の根源を探ってきた今世紀の物理学で、最後まで残された大きな「宿題」が解決することになる。ただ、今回は数少ない現象をもとに解析を工夫して得た結論のため、今後、より強大な加速器によって、さらに明白な証拠探しが求められることになろう。

 欧州の物理学会に電子メールで広まっている情報などを総合すると、グループは、高速の陽子と反陽子とが衝突して起こる現象に、トップクオークと見られる粒子が介在している有力証拠をつかんだ。その粒子の質量は、1740億電子ボルト前後。陽子の180余倍もの大きさになる。

 グループが近く出す論文の題名には「トップクオークの証拠」という言葉を使う意向といわれる。「トップクオークの存在をうかがわせる現象」などの表現を使わず「証拠」という言葉を使うことは、グループが発見に深い自信を持っていることを物語る。

 日本からは、文部省高エネルギー物理学研究所、筑波大、大阪市立大などの研究者が参加している。

 グループは、同研究所の粒子加速器「テバトロン」で、高速の陽子と反陽子を衝突させ、さまざまな粒子が生まれたり消えたりする現象を「CDF」と呼ぶ検出器で観測した。1992年8月から93年5月までの実験の結果、トップクオークが生まれて、すぐに壊れた場合に見えると予想される現象が、約10例観測されたとされる。

 似た現象は他の粒子によっても起こりうるため、すべてがトップクオークとはいえないが、全く関係しないで、この現象がこれだけ起こる確率はきわめて低く、「トップクオークが存在する証拠」と結論した。
 
 クオークの確認は、77年の5番目の「ボトム」以来17年ぶり。現代物理学の基本である素粒子の標準理論の正しさを裏付ける大きな節目になる。クオークは、陽子や中性子、中間子などを構成する基本粒子。日本の小林誠・高エネルギー物理学研究所教授、益川敏英・京大教授が「少なくとも6個ある」とする理論を築き、うち5種類が実験で見つかっていた。

 一方、電子やニュートリノなど「レプトン」と呼ばれる軽い基本粒子も6個あることから、空白のトップクオークの部分も必ず埋まると、ほとんどの物理学者が確信していた。しかし、世界のほかの装置では衝突エネルギーが足りず、観測できなかった。

 

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